『見上げた先に』





ミスをした。何のミスを何時何処でしたのかと問われれば、今さっきと答える。
ついさっき、一、二分前。任務を言い付けられていた。至極簡単な任務だった。
敵地に赴き、簡単な現地調査…所謂下見というやつだ。それをしてこいと言われた。
調査はすぐ済む筈だった。なのに、手違いで正体がばれてしまった。
それまで親切だった者達が一変、鬼のような形相をして追い掛けてくるではないか。
これはまずいと、必死になって、死に物狂いになって逃げた。

親方様から、『いいか、もし万が一素性がばれたら、何が何でも逃げろ。同業者と分かれば相手は容赦しない。
おまけにあそこのボスは…。』親方様は、なぜかそれ以上話さなかった。
口をつぐんで、妙な顔をしていた。





建物の影に身を潜めうずくまる。全力疾走したせいで、呼吸が酷く乱れていた。
胸が苦しい。肺が痛い。額から汗が滲むも、拭う気さえ起こらなかった。どうしよう。
身体検査の際、無線も、死ぬ気丸も没収されてしまった。
囚まるのも時間の問題だ。





人の気配がした。全身に緊張が走り身体が強張る。
ジャリジャリと足音が聞こえ、次第に大きくなる。誰か来た。
反射的に頭を抱え防御の姿勢を取った。




だが、相手は一向に何か仕掛けてくる様子はなかった。
変だと思い、顔を上げてみれば、それこそ仰天した。
ぱくぱくと口を上下して、自分の心情を相手に伝えようと試みる。

「ス…スクアーロ?」

名を呼んではみたものの、相手は恐持ての面を崩さず、ただ突っ立っている。
太陽の光が銀髪に反射して、やけに眩しく見えた。




「え、あ、あの。なんで貴方が」

「馬鹿かテメェ。」

投げ掛けた問いは容赦なくばっさりと切り捨てられ、おまけに罵声を吐かれる。
馬鹿と罵られたバジルとしても、反論は疎か、その発言の意図さえも見出だせなかった。
なぜ…そんなことを言われなければならないのか。

「え…、それはどういう…。」

「テメェは身売りでもしにきたのか?」

またしても鋭い声が降ってくる。もう意味がわからなかった。
お手上げだ。理解する隙がないのだ。

「……意味が、わかりません。」

スクアーロの舌打ちが聞こえる。苛々と、全身殺気立っているのがわかった。


「ここのファミリーを束ねてる野郎はな…、お前みてぇな餓鬼が好物なんだよ。」

それだけを言うと、問答無用で肩に担がれた。
ヒュッ…と、風を切る音、肌には風の感触がして…気付けば空の上だった。
多分、地面を蹴って、壁を蹴って、屋根瓦を蹴って…今の現状に至るわけだが…。
実際、人がこの技を使うには…少々無理が…。
などと考えているうちに、敵地が遠ざかっていく。
建物が小さくなるに連れて、安堵感が増していった。
はぁ…どうやら助かったようだ。







「あの、スクアーロ。」

スクアーロは答えなかった。仕方ないので、そのまま続ける。

「何処へ行くんですか?」

スクアーロはやっぱり答えなかった。
まぁいいか、あそこより厄介な場所などそうはない筈だ。
バジルは改めて大きく息を吐いた。













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雨月夜様より頂いたスクバジ小説でした♪
ウフフフフフ、スークーバージーです!!
済みません、浮かれてます。
バジルがピンチの時にはどこからか現われるスクの旦那。
男前ですね。この後、自分の部屋にお持ち帰りです。
バジル君はあそこより厄介な場所は無いと言ってますが、さて・・・。vvv

改めて、夜さん素敵な小説を有難うございましたv

2007.4.25up
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